ピロリ菌とは
ヘリコバクター・ピロリ(通称ピロリ菌)は、胃の内部という強酸性の過酷な環境下で生息できる特異な細菌。この菌はウレアーゼという特殊な酵素を産生し、自身の周囲を中和して身を守っています。
初期の自覚症状は稀ですが、感染してから長期間が経過すると胃粘膜に慢性的な炎症が発症。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、悪性リンパ腫といった消化器系の重篤な疾患の発症リスクを高める主要因となります。
主に免疫が未熟な幼児期に感染することが多く、自然に排出されることはほとんどありません。加齢とともに胃炎が進行し、胃がんの前段階と見なされる萎縮性胃炎へ移行することも多いです。
将来的な疾患リスクを軽減するためにも、早期発見と除菌治療は極めて重要。当院では胃内視鏡検査の際にピロリ菌感染の疑いが確認された場合、感染診断のための検査をご提案しております。
ピロリ菌検査の重要性
多くの場合、明確な自覚症状がないまま胃粘膜で静かに炎症を広げてしまうピロリ菌感染。この慢性的な炎症に胃粘膜自体が薄く痩せてしまう萎縮性胃炎を引き起こし、これが胃がん発生の温床となることが最大の問題点です。
幸いにもこの菌は1週間ほどの内服治療で高い確率で除菌が可能。検査によって感染を早期に突き止め、除菌を成功させることは、炎症の連鎖を断ち切り、将来の胃がん発症の可能性を大きく引き下げることに繋がります。
ただし、注意すべきは「除菌成功=胃がんリスクがゼロ」ではないという点。除菌前の胃炎の進行度にその後の発がんリスクは影響されるため、治療後も定期的な胃内視鏡検査で胃の状態を継続的にチェックしていくことが不可欠です。
ピロリ菌検査は
どんな人が受けるべき??
胃痛などの自覚症状がない方でも、以下に該当する場合はピロリ菌に感染している可能性が考えられます。
一度、検査をご検討ください。
- ピロリ菌に感染している(していた)家族がいる
- 胃潰瘍や十二指腸潰瘍にかかったことがある
- 健康診断等で慢性胃炎と指摘された
- 家族に胃がんを患った方がいる
ピロリ菌の検査方法
内視鏡(胃カメラ)を用いて行う検査法
ウレアーゼ検査
内視鏡時に採取した胃粘膜を試薬に入れ、色の変化で感染を判定。ピロリ菌が持つウレアーゼの働きを利用した、その場で結果がわかる検査です。
検鏡法
胃の組織を特殊なインクで染色し、顕微鏡で菌を探し出す検査。胃炎の程度や特徴を客観的に評価できるのが大きな利点です。
内視鏡を使わずに行える侵襲のない検査法
尿素呼気試験
ピロリ菌がいると生じる特定のガスを呼気から測定する検査。検査薬を内服後に袋に息を吹き込んで採取するだけなので負担が少なく、高い正確性が特徴です。わずか20分で判定可能。
抗体測定
採血や採尿により、体内にピロリ菌の抗体があるかを調べます。過去の感染でも陽性になるため、現在の感染を証明するものではありません。
ピロリ菌の治療
ピロリ菌の除菌治療で用いられるのは2種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬。この計3剤を1週間ほど継続して服用することでピロリ菌を高確率で除菌できます。
そして、大切なのが除菌効果判定。服薬期間を終えた3ヶ月後に行う効果判定。低侵襲で感度の高い尿素呼気試験で判定します。除菌の成功率は約80%です。万が一、除菌しきれていなかった場合は薬の種類を変えて二回目の治療(二次除菌)に臨みます。二次除菌の成功率は95%です。
さらに重要なのが除菌成功後の経過観察です。除菌によって胃がんの発症リスクは大幅に下がりますがゼロにはなりません。除菌前の胃炎が進んでいた方ほど、そのリスクは依然として残ります。
除菌後も決して油断せず、医師の指示に従って定期的な胃内視鏡検査を継続していくことが不可欠です。